冪集合公理

数学における冪集合公理(べきしゅうごうこうり、: axiom of power set)とは、公理的集合論ツェルメロ=フレンケルの公理系の一つである。

ツェルメロ=フレンケルの公理系の形式言語において、この公理は次のように記述される:

A P B [ B P C ( C B C A ) ] {\displaystyle \forall A\,\exists P\,\forall B\,[B\in P\iff \forall C\,(C\in B\Rightarrow C\in A)]}

ここで PA の冪集合 P ( A ) {\displaystyle {\mathcal {P}}(A)} を表す。この公理を通常の言葉で言い直すと、次のようになる:

任意の集合 A が与えられたとき、ある集合 P ( A ) {\displaystyle {\mathcal {P}}(A)} が存在し、 B のすべての元が A の元でもあるとき、またそのときに限り、 B P ( A ) {\displaystyle {\mathcal {P}}(A)} に属する。

部分集合関係は公理的に定義されるため、形式言語において部分集合は用いられない。実際、公理はお互い独立なものでなければならない。外延性公理により、上記の集合は一意であり、このことはすべての集合に冪集合が存在することを意味する。

冪集合公理は集合論のほとんどの公理化において現れる。それは一般に問題を生じさせるものではないが、構成的集合論(英語版)においては可述性(predicativity)に関する懸念を解消するためにより弱いバージョンの冪集合公理が好まれている。

帰結

冪集合公理は、二つの集合 X {\displaystyle X} Y {\displaystyle Y} に対し、次のようなデカルト積の簡単な定義を許す:

X × Y = { ( x , y ) ;   x X y Y } . {\displaystyle X\times Y=\{(x,y);\ x\in X\land y\in Y\}.}

ここで

x , y X Y , {\displaystyle x,y\in X\cup Y,}
{ x } , { x , y } P ( X Y ) , {\displaystyle \{x\},\{x,y\}\in {\mathcal {P}}(X\cup Y),}
( x , y ) := { { x } , { x , y } } P ( P ( X Y ) ) {\displaystyle (x,y):=\{\{x\},\{x,y\}\}\in {\mathcal {P}}({\mathcal {P}}(X\cup Y))}

であり、

X × Y P ( P ( X Y ) ) {\displaystyle X\times Y\subseteq {\mathcal {P}}({\mathcal {P}}(X\cup Y))}

であるため、このデカルト積は集合であることに注意されたい。

任意の有限集合の類に対しても、デカルト積を次のように帰納的に定義することが出来る:

X 1 × × X n := ( X 1 × × X n 1 ) × X n . {\displaystyle X_{1}\times \cdots \times X_{n}:=(X_{1}\times \cdots \times X_{n-1})\times X_{n}.}

デカルト積の存在は、クリプキ=プラテクの集合論(英語版)におけるように、冪集合公理を用いなくても証明できることに注意されたい。

参考文献

  • Paul Halmos, Naive set theory. Princeton, NJ: D. Van Nostrand Company, 1960. Reprinted by Springer-Verlag, New York, 1974. ISBN 0-387-90092-6 (Springer-Verlag edition).
  • Jech, Thomas, 2003. Set Theory: The Third Millennium Edition, Revised and Expanded. Springer. ISBN 3-540-44085-2.
  • Kunen, Kenneth, 1980. Set Theory: An Introduction to Independence Proofs. Elsevier. ISBN 0-444-86839-9.

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公理
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