逆関係

数学における二項関係逆関係(ぎゃくかんけい、: converse relation)は、関係(のグラフ)に属する順序対の成分を逆順にして得られる関係である。例えば、「~の子である」という関係の逆関係は「~の親である」という関係である。

定義

厳密に言えば、LX × YX から Y への関係とするとき、その逆関係 L−1

y L−1 xx L y

によって定まる関係をいう (Halmos 1975, p. 40)。これは

L 1 = { ( y , x ) Y × X ( x , y ) L } {\displaystyle L^{-1}=\{(y,x)\in Y\times X\mid (x,y)\in L\}}

とも書ける。逆関係 L−1 などと書く記法は逆写像の記法の流用である。写像はその多くが逆写像を持たないのに対し、関係は必ず逆関係を持つ。 ただし、このような記法を用いているにもかかわらず、逆関係は関係の合成の意味での逆元にはなっていない、つまり一般には

L L 1 i d {\displaystyle L\circ L^{-1}\neq \mathrm {id} }

であることに注意しなければならない。

逆関係は反対関係 (inverse relation) や(ダガー圏のよく知られた例として、転置行列と同様のものとして見て)(もとの関係の-)転置 (transpose) とも呼ばれ、Lc, LT, L, L˘ などとも書かれる。

性質

  • 自分自身を逆関係として持つ関係は対称関係ダガー圏(英語版) の言葉で言えば、自己随伴 (self-adjoint))である。
  • 関係が反射的非反射的対称的反対称的非対称的推移的完全、三分的、 半順序全順序、狭義弱順序、全前順序(弱順序)、同値関係であるという性質は、逆関係に遺伝する。
  • 関係が拡張可能でも、その逆関係は必ずしも拡張可能ではない。
  • 関係をその逆関係に写す操作は、関係の圏 Rel にダガー圏の構造を与える。
  • 集合 X 上の二項関係全体の成す集合 B(X) は、関係を逆関係に写す操作を対合とする対合半群を成す。

通常の順序関係(狭義の順序でも半順序でもよい)の逆関係は、反対順序で与えられる。例えば

( ) 1 = , ( < ) 1 = > {\displaystyle (\leq )^{-1}={\geq },\quad (<)^{-1}={>}}

などとなる(ここでの括弧は明確化のためのもので必ずしも必要ではない)。

(inverses)

恒等関係を I {\displaystyle I} とおいた時、関係 R {\displaystyle R} に対して、関係の合成にて R X = I {\displaystyle R\circ X=I} ならば X {\displaystyle X} を右側裏関係といい、 Y R = I {\displaystyle Y\circ R=I} ならば Y {\displaystyle Y} を左側裏関係という。また、 R {\displaystyle R} に右(左)側裏関係が存在するとき R {\displaystyle R} は右(左)に可逆な関係であるという。右に可逆かつ左に可逆であれば単に可逆あるいは両側可逆という。左に可逆ならば左全域的でなければならないし、右に可逆ならば右一意的でなければならない。ただしここでは関係の合成を、写像の合成の慣例に従った順で定義しているものとする。

写像の逆関係

詳細は「対応 (数学)」を参照

写像が(写像として)可逆であるための必要十分条件は、写像の逆関係が再び写像となることである。この逆関係こそが逆写像である。

写像 f: XY の逆関係 f−1: YX

graph f 1 = { ( y , x ) y = f ( x ) } {\displaystyle \operatorname {graph} \,f^{-1}=\{(y,x)\mid y=f(x)\}}

で定義される。これは必ずしも写像でなくてもよいが、f が単射であることを課さなければ f−1 は多価になってしまう。この条件は f−1部分写像であるためには十分であり、さらにこのとき f−1 が(全域)写像となるための必要十分条件が f全射(したがって全単射)となることであるのは明らかである。f全単射であるとき、f−1f逆写像と呼ばれる。

当然、 f {\displaystyle f} の逆写像は f {\displaystyle f} との合成で恒等写像すなわち恒等関係を導くので、 f {\displaystyle f} を関係とみなせば f 1 {\displaystyle f^{-1}} はその裏関係である。

関連項目

注釈

参考文献