この項目では、五十音図のわ行う段 (wu) について述べる。
発音
歴史的に日本語で「wu」の発音が存在したかどうかは明らかではない。加えて、「u」と「wu」とは区別せず、認識上は同一の発音とみなされる。
- 一方、「居り」「wori」は、「wu」+「ari」の複合から生じたと考え、したがって wu の存在を裏付けるとの説もある[1]。
- 古典日本語文法のワ行下二段活用に、ゑ ゑ う うる うれ ゑよ とあり、わ行う段が現れる。
文字
「五十音#51全てが異なる字・音: 江戸後期から明治」も参照
江戸時代から明治時代の間に、あ行う段 (u) とわ行う段 (wu) の仮名を区別しようとする者が現れた[2]。字の形は文献によってまちまちである。「」と「」はその内の二つに過ぎない。
- u
- 古くからある仮名
- 新しく作られた仮名
- [5] (「傴」の省画。片仮名)
このような使い分けは、音義派の学説に基づいて考え出された。音義派は、あ行い段とや行い段、あ行え段とや行え段、あ行う段とわ行う段は、本来違う音であると主張していた。そこで、それぞれに違う仮名を当て嵌めようとしたのである[15]。
しかし、日本語の研究が進み、それぞれに区別はないとする学説が出た。これらの奇字が実際に用いられることはなかった[15]。
符号位置
2021年9月、Unicode 14.0 に「」(U+1B11F, HIRAGANA LETTER ARCHAIC WU) と「」(U+1B122, KATAKANA LETTER ARCHAIC WU) が採用された[16]。
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
𛄟 | U+1B11F | - | 𛄟
𛄟 | HIRAGANA LETTER ARCHAIC WU |
𛄢 | U+1B122 | - | 𛄢
𛄢 | KATAKANA LETTER ARCHAIC WU |
脚注
[脚注の使い方]
- ^ 柳田征司『日本語の歴史5上』(武蔵野書院、2014年)p54。
- ^ 馬渕和夫『五十音図の話』大修館書店、1994年(原著1993年)、17-24,93頁。ISBN 4469220930。
- ^ a b c d e 綴字篇
- ^ 村山自彊、中島幹事『仮名遣』開新堂、1891年、19頁。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862200/14。
- ^ a b c d 音韻啓蒙 : 2巻. 上巻
- ^ 日本新文典
- ^ 訓蒙明声初途. 初編
- ^ 有賀長隣『片仮名元字』、4頁。https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/862191/4。
- ^ a b 小学日本文典入門. 巻之1
- ^ Iannacone, Jake (2020). "Reply to The Origin of Hiragana /wu/ 平仮名のわ行うの字源に対する新たな発見"
- ^ 国語仮字つかい
- ^ 語学捷径. 上
- ^ 辞礎
- ^ 語学捷径. 上
- ^ a b 唐澤るり子 五十音図の不思議な文字
- ^ Kana Extended-A, The Unicode Standard, Draft Version 14.0
関連項目